Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』

吉田鋼太郎が「恐ろしい世界を作りたい」と、意欲的に公言しているのだから『マクベス』は人間の底知れない欲望の恐ろしさを見せてくれる、と期待しよう。 藤原竜也がスコットランドの将軍マクベス、土屋太鳳がマクベス夫人。ともに初役だ。四大悲劇の一つで、男優でも女優でも憧れる難役で大役である。 マクベスはダンカン王(たかお鷹)を殺害し、最高権力を奪取しようとする欲深い男。マクベス夫人が夫をけしかけ王の座に据えて自身も女王になろうとする女だ。現代のサラリーマン社会でも、少しでも出世しようとあらがう亭主、尻を叩く女房はいくらでもいる。しかし、シェイクスピアの戯曲世界は違う。その欲望の醜い深さ、手段、その結末の悲惨さが凄まじい。 美貌のマクベス夫人は狂乱の末、血に塗れた両手を洗い流そうとする場面は、例えば坂東玉三郎や映画『蜘蛛巣城』の山田五十鈴の背筋が凍りつく演技が印象に残っている。鬼気迫る――と言えた。 蜷川幸雄演出の申し子とさえ思える藤原は『ハムレット』を経験し、繊細な王子を表現。吉田鋼太郎は早々と主役を決めていたらしい。土屋は、野心的でありながら献身的なマクベス夫人と捉えているようで、シェイクスピア劇での発声を工夫しているという。 動く森、マクベスの壮絶な死。演出と上演台本も担う吉田は3人の魔女の一人としても出演する。化粧、衣装はどうなるのか。見どころは多い。

25/5/8(木)

アプリで読む