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パリ発、ヨーロッパで話題の作品を
佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
クィア/QUEER
25/5/9(金)
新宿ピカデリー
多彩な意欲作を連発しているルカ・グァダニーノの新作は、彼が長年映画化を切望していたビート作家、ウィリアム・S・バロウズの自伝的な小説が原作。グァダニーノはこれを純愛という切り口で、どこか寓話的な雰囲気とともに映像化した。メキシコで、酒とクスリの怠惰な毎日を過ごす中年男が、若く輝く青年に恋をしたことで日常が変わる。だが相手がクィアか否かがわからない彼は、なかなか親密になれず。触れたいのに触れられないもどかしさに心を焦がす主人公の一途さが、せつない。 ダニエル・クレイグが全身全霊で恋する男のいじらしさを表現して泣かせる。正直ジェームズ・ボンドよりも、俳優としてはこちらの方に軍配を上げたくなる。相手役のドリュー・スターキーの艶っぷりも出色。さらに本人とわからない怪演を見せるジェイソン・シュワルツマン、レスリー・マンヴィルも素晴らしく、バロウズのイメージが変わるほどの感銘を受けた。
25/5/9(金)