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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
劇場版 米寿の伝言
25/5/10(土)
池袋シネマ・ロサ
体の中が入れ替わる映画といえば『転校生』を思い出す。あちらは同世代の男女の体が入れ替わってしまうというお話だ。本作が斬新なのは、死者と孫の意識が入れ替わってしまうというもの。しかも天才発明家だった老人の葬儀の日に、発明機を使い孫の意識が死者の体に入り、死者の老人が孫の体に入ったことで、孫を救うべく状況を知る家族が奮闘するという内容だ。 こんな面白い脚本をよく考えたものだと感心した。しかも程よい笑いが入り混じった演出も心地良くて好感が持てる。更には出演者全員が印象に残るように、個性的で全員が憎めないキャラクター設定なのだ。確かに才能ある老人が若者の姿で甦ったとなれば、その才能をまた社会貢献に役立てるのだ。逆に特出した能力が特にない孫が死者の体に入って戻れなくなったとしたら、社会はどう見るのだろうか。このように優生思想についても描かれているのだが、重くなく軽やかなストーリー展開というのも魅力的だ。俳優になりたかった祖父の願いを叶えようと、娘がプロデューサーとして立ち上がり、俳優になった孫ふたりが孫役で主演の祖父を支える映画は、笑いと人間愛に溢れたドタバタSFコメディだった。
25/5/10(土)