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水先案内人のおすすめ

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監督、役者に着目して選んだこの映画

樋口 尚文

映画監督、映画評論家

新幹線大爆破〈1975年〉

『SUPER EXPRESS109』(新幹線大爆破フランス公開版) もうあの公開初日から半世紀が経ったのかというのが信じられないのだが、1975年7月に佐藤純彌監督の期待の大作『新幹線大爆破』を公開初日に観て、あまりの面白さに仰天したのだが、ずっと任侠映画や実録やくざ映画を上映してきた東映の映画館にこういう見慣れないサスペンス映画がかかるのは違和感があったのか、劇場は嘘のようにガラ空きだった。「なんでこんなに面白い映画にお客がいないんだ」と義憤に駆られた映画少年の私は、国内で興行的に報われなかったこの傑作が再編集を経てパリで大ヒットしていると聞いてわが意を得たりであった。そして東映はこのヒットに気をよくしてこのフランス公開版『SUPER EXPRESS109』を都内数館で凱旋興行し、いったいどんな「再編集版」なのだろうと私はまた初日に観に行った。すると!なんたることかオリジナルの日本版を40分以上もカットし、音楽も差し替え、健さんはじめキャストは吹き替えでフランス語で話すという驚きのバージョンなのであった。オリジナル版は次々と繰り出されるサスペンスのアイディアのはざまに犯人グループの(いかにも当時を反映した)背景のエピソードがはさまれる。ここが単なるサスペンス映画に終わらない味わいを生んでいるのだが、ややウエットにサスペンスを停滞させるうらみもあった。ところがフランス公開版は、その犯人の横顔をめぐる踏み込みを大胆にカットして、ひたすらサスペンスで突っ走るシンプルな構成に改訂している。案外これはこれで成立しているところが本作の面白いところだが、これは編集方針によって映画が様変わりする稀有な実例なのでぜひ両作を見比べてほしいと思い、上映を企画した。ほとんど上映機会のなかった『SUPER EXPRESS109』をスクリーンで観られる稀有な機会だ。 ●『新幹線大爆破』(1975年版)  5/9(金)〜 全国でリバイバル上映 ●新幹線大爆破 フランス公開版〈SUPER EXPRESS 109〉特別上映 5/28(水)・30(金)・31(土) 池袋・新文芸坐 ※5/28(水)上映後トーク:樋口尚文(映画監督・映画評論家)、樋口真嗣(Netflix版『新幹線大爆破』監督)

25/5/9(金)

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