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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ノスフェラトゥ

吸血鬼が出てくるからホラー映画なんだが、怖がらせようという感じではなく、文芸の香り高い西洋時代劇になっている。 原作はブラム・ストーカーの『ドラキュラ』で、それを1922年に、舞台をイギリスからドイツへ移して映画にした『ノスフェラトゥ』のリメイク。「ドラキュラ」が「ノスフェラトゥ」という名になっている。 今回の映画は舞台を現代に移したものではなく、原作と同じ19世紀。世の中は、かなり科学的になっているが、まだ魔術とか魔法も残っている時代で、科学者や医者も、どこか怪しげ。 若い夫婦が主人公で、夫は仕事でトランシルヴァニアへ行く。残された妻を奇怪な現象が襲い、夫も怪しげな伯爵に襲われる。夫が行くトランシルヴァニアのシーンが、不気味。 詳しいわけではないが、1920年代のドイツ表現主義映画の雰囲気が伝わってくる。YouTubeで1922年の映画(原題はNosferatu – Eine Symphonie des Grauens)を見たが、100年前のドイツ映画のすごさを確認してしまった。撮影技術は進化しても、映画の基本フォーマットは100年前に完成されてしまい、あとはそれをアレンジしているだけなのかもしれない。 となると、どうアレンジするかが問われるが、この映画は、あえてドイツ表現主義的に撮っていて、それが成功している。現代風にしていないところが、かえって、新しい。 多くのシーンでシンメトリーな構図のセンターに人物がいて、正面を見てしゃべる。新鮮。色調も全体に抑えられていて、ときにはほとんどモノクロームみたいに見える。セリフはあるが、どことなくサイレント映画っぽい。それだけに、ときおり流れる鮮血の赤が、美しく、恐ろしい。

25/5/12(月)

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