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春日 太一
映画史・時代劇研究家
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
25/5/23(金)
TOHOシネマズ日比谷
ありがとう、イーサン・ハント、そしてトム・クルーズ。 観終えて半日が経ってまず浮かんできたのは、この言葉だった。 劇中のイーサン・ハントの闘いが、本作に賭けるトム・クルーズの俳優人生そのものに見えてきたからだ。 AIに支配されようとしている世界に生身ひとつで立ち向かうイーサン。その姿が、命がけのアクションを自ら実践することで、現実においてもAIの登場で人間の存在が軽視されつつある現状に対して、トム・クルーズが全力で抗おうとしているように映ったのである。 また、本作では人類の最後の希望として、その未来がイーサンに託されている。それもまた、不振に喘ぐハリウッドの娯楽映画におけるトム・クルーズの立場と重なってきた。 劇中、一作目のイーサンの姿が何度か出てくる。それに比べると、さすがのトム・クルーズも身体も顔も老いが見えた。だが、それでもなお自己記録を遥かに更新する、危険なアクションに挑み、成し遂げている。予告編やポスターで使われたキービジュアルはあくまで序章でしかない。全ては観客を喜ばせるため、身体を張り続ける──。 本作のイーサンはヒーローを超えて神のような存在になっていく。それと同時に、トム・クルーズからも神々しいばかりの光が放たれているようにも感じられた。
25/5/17(土)