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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

マンジャーレ! ?ノンナのレストランへようこそ

傑作とか名作とかではないけれど、観終わったあと多幸感を運んでくれる映画がある。ジャンルとしては、『ポトフ 美食家と料理人』『至福のレストラン 三っ星トロワグロ』のような“料理映画”が多いように思うが、ある人にとっては“恋愛映画”だったり“音楽映画”だったりするかもしれない。個々人の“幸福感”による、といえばいいのか。Netflixで5月9日から配信された新作映画『マンジャーレ! ~ノンナのレストランへようこそ~』(英語版タイトル:Nonnas)は、観終わったあと心暖かくしてくれる、そんな映画だ。 「マンジャーレ」とはイタリア語で「食べる」という意味の動詞。「ノンナ」とは「祖母」という意味だが、単なる「祖母」という意味を超えて、「家族の絆や伝統を象徴する愛情のこもった呼び名」、だそうだ。そのタイトルどおり、本作はイタリア系アメリカ人の「お祖母ちゃん」たちが厨房を切り盛りする、全編からイタリアの香りが匂い立ってくるようなヒューマンな“料理映画”。 ニューヨークのスタテン島のイタリアン・レストランを舞台に、料理が大好きだった亡き母の想い出を留めるためにイタリア料理店を作った中年男性と、母の友達だったお祖母ちゃん4人が奮闘するというお話。映画のラストでは、それがスタテン島に実際にあるレストラン「エノテカ・マリオ」とそのオーナーのジョディ・スカラヴェラをモデルにした実話であることが明かされる。 南北に細長い国の形状からか、イタリア料理はメニューが豊富で多種多様。ミネストローネ、カプレーゼ、カルパッチョなどどれも美味しそうで、ヴォリューミー。ものすごい数の料理がテーブルいっぱいに並べられて、豪快に食べるシーンが圧巻。とにかくイタリア人は、よく食べ飲み、よくしゃべるのだ。彼ら彼女らの爆食が、見るものの食欲を刺激し、幸福にする。 お祖母ちゃんたちに扮したキャスティングが、すごい。『ロッキー』のタリア・シャイア(79歳)、『グッドフェローズ』のロレイン・ブラッコ(69歳)、『カプリコン・1』のブレンダ・ヴァッカロ(85歳)、『テルマ&ルイーズ』のスーザン・サランドン(78歳)。彼女たちが作る料理は、単に美味しいというだけでない。シシリー島、ボローニャ、フィレンツェなどイタリア地方独特の、家族の歴史、絆の深さが料理のなかに込められている。だから「ノンナのレストラン」は、美味しさと安らぎのふたつを味わえるのだ。 その昔、ファンだったソフィア・ローレン、クラウディア・カルディナーレなどのイタリアの女優を思い出しつつ見ると、より一層、美味しくなる映画だ。監督は『ワンダー君は太陽』『ディア・エヴァン・ハンセン』のスティーヴン・チョボスキー。

25/5/18(日)

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