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水先案内人のおすすめ

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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

ガール・ウィズ・ニードル

透明感あふれるモノクロの映像が、画面の垣根を越えて作中へと誘う。登場人物に迫る手持ち撮影が画面を揺らし、不穏な空気を過剰に醸成する。『ガール・ウィズ・ニードル』を観始めた客は、前知識がなくとも危険な展開を敏感に感じ取り、自ずと次のシーンに目を凝らすことになるだろう。 物語は、1918年に第一次世界大戦が終わる直前から始まる。舞台は、デンマーク・コペンハーゲン。夫を戦争に取られたカロリーネは、アパートの家賃も払えないほど生活に困っていた。勤め先の縫製工場では、オーナーの男性に目をかけられて妊娠してしまう。結婚を誓わせたが、男性の親族の反対にあい、破局。出産した乳児を、養子を斡旋しているという女性ダウマに預けるが……。 スウェーデン出身の監督が、デンマークで実際にあった連続殺人事件に触発されたという。大戦で混迷する社会的背景が物語に重く垂れこめ、登場人物たちが置かれた状況を浮き彫りにする設定が効いている。 映画でキスシーンは定番といっていいだろう。戦地から戻った夫の顔には、酷い戦傷があった。見世物として舞台に立った夫に、カロリーナが唇を寄せる光景をカメラはどう捉えたのか。ぜひ観てほしい印象的なシーンだ。

25/5/16(金)

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