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小劇場から大劇場まで、年間300本以上観劇。素晴らしい舞台に出会うため、気になる作品は何でも観ます。
森元 隆樹
演劇ジャーナリスト/プロデューサー/演劇伝道師/読売演劇大賞選考委員
THE ROB CARLTON『ENCOUNTERS with TOO MICHI』
25/6/11(水)~25/6/22(日)
赤坂RED/THEATER、 ABCホール
京都の劇団THE ROB CARLTON(ロブカールトン)。何が凄いかといって、とにかく舞台上でボケ倒すのである。笑いを見苦しく取りに行くのではない。真顔でボケて、真顔で異を唱え、とにかく舞台上は大まじめな会話が続くのだが、それが結果としてボケ倒しの連続となっていて、もう観客は「全員どうかしてる? それとも私が間違ってる?」と思うしかないのである。昼公演と夜公演の間に花粉症の薬を飲んでしまった役者が、夜公演の最中に舞台上で完全に眠ってしまい、残された役者たちが未曽有のカオス状態になってしまったり、平安貴族たちが集まって勅撰和歌集を作ろうとしているはずなのに、大真面目に訳の分からないことを言って、大真面目に突っ込んでいくので、もう観客は「なにがどうしたいの?」と思いながら、感情が失禁したように、だだ洩れで笑うしかないのである。 そんなTHE ROB CARLTONが今回繰り広げるのは、19F(=19FLOOR=第19回公演)『ENCOUNTERS with TOO MICHI』 訳して 「未知過ぎとの遭遇」 <<<>>> “未確認飛行物体を確認“ 未確認飛行物体って確認された時点で、未確認ではないのでは。 そんなことはどうでもいい。 とまれかくまれ、未確認飛行物体が現れたのだ。 何をどうすればいいのですか? そんなこと、誰がわかるというものか。 (劇団HPより) <<<>>> 「未知との遭遇」ではない。「未知過ぎとの遭遇」である。人間、未知なる物体に遭遇したらどうなるのか。というか、それが「未知過ぎる」場合はどうなるのか。脳内把握も処理も理解も追い付かず、「仰る意味がよく分かりませんが」という場合どうなるのか。というか、何に遭遇するのだロブカールトン。というか、本当に遭遇する気があるのかロブカールトン。ああ、もう想像力の限界。というか、ロブカールトンの舞台こそが、あまりにも未知過ぎ。 <<<>>> 出演するボブ・マーサム(作・演出の村角太洋と同一人物)の舞台上での余裕は素晴らしいの一言であり、そこに阿吽の呼吸で、客演の常連・高阪勝之(男肉 du Soleil)がボケ重ねる。さらに今回、しなやかで柔らかな演技をみせる森下亮(クロムモリブデン)が加わり、まさにオール関西でボケ倒すつもりであろうからして、繰り出される一言一言は、心臓近くの笑いの筋肉を確実にくすぐりにくる。 観終わった後きっと、未知過ぎる自分に出会える、そんな、THE ROB CARLTON。必見。
25/5/31(土)