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スリル&サプライズ映画の専門家

高橋 諭治

映画ライター

秋が来るとき

1998年に『ホームドラマ』で長編デビューしたフランソワ・オゾン監督は、それ以降、20本以上の劇映画を発表している。ほぼ毎年作っているわけだが、作品ごとにテーマも演出スタイルも変わるため、未だにつかみどころがない。それでも、あらゆるジャンルの映画を水準以上に仕上げる手腕の持ち主ゆえに、つい見続けてしまう不思議な監督だ。 最新作の『秋が来るとき』は、そんな多作の監督たるオゾンのフィルモグラフィーの中でもトップクラスの出来ばえだ。とりわけ筆者のように『まぼろし』『スイミング・プール』が好きな人には断然お勧めしたい。 主人公はブルゴーニュ地方の一軒家で暮らす80歳の独居女性ミシェル。老いの不安を抱えながらも自立した生活を送る彼女と、折り合いの悪い娘、あどけない孫、近所の親友とその息子が織りなす人間模様が、思いがけない形で不穏なサスペンスを帯びていく。 美しい秋景色の中に登場人物たちの欲望、嘘、猜疑心、罪悪感が絡み合う物語は、熟成した味わいの人間ドラマであり、上質なミステリー劇でもある。もはや名人芸というべきオゾンの卓越した語り口に唸るほかはない。

25/6/2(月)

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