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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

おばあちゃんと僕の約束

ベタな言い回しになるが、「想いが伝わってきて泣いてしまう」という感情に包まれる映画だ。誰もがきっと持ち合わせている、不甲斐ない自分を見つめてくれた人の愛に気づく瞬間が映画の随所に散りばめられている。これを普遍的なテーマというのかもしれないが、人は多かれ少なかれ、誰かから愛情を注いでもらっており、それに甘えて生きてしまうとその人の有り難みに気づくのが遅くなる。そんなことをこの映画は日常の出来事を優しく綴りながらそっと思い出させてくれるのだ。 これがタイ映画初のアカデミー賞国際長編映画賞のショートリスト入りを果たした作品と聞くと、世界はまだまだ捨てたものじゃない。社会的問題が描かれてなかろうが、大事件が起こらなくとも、人の温もりが滲み出ている映画は評価に値するという証だ。しかも監督と祖母とのエピソードや、脚本家の思い出が作品の随所に散りばめられているのがまた良い。 何度も観たいと思える作品だった。孫役のビルキンこと、ミュージシャンで俳優のプッティポン・アッサラッタナクンはタイの人気スターなだけあり、茶目っ気があって目が離せない。そしておばあちゃん役のウサー・セームカムは78歳、本作で俳優デビューというのには驚いた。このふたりの化学反応が観客を優しく包み込む映画だった。

25/6/7(土)

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