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芸術・歴史的に必見の映画、映画展を紹介

岡田 秀則

国立映画アーカイブ主任研究員

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

昨年2024年は、初代「ゴジラ」誕生から70年の節目となった。以降もイメージを変えながら時代ごとに社会を脅かす象徴的モンスターとして君臨し、ついには「マイナスワン」なるゴジラ前史まで創造された。日本の特撮技術者たちがビジュアル化し、CGに切り替わった今も世界をたびたび席巻するこの怪物は、現代のアーティストたちにいかなるインスピレーションを与え得るのか。もしゴジラがいたら標的になりそうな、東京一のランドマークのてっぺんで開催中の「ゴジラ・THE・アート展」は、この問いに挑もうとしている。 だが実際、どのように挑んだらいいのか。あのいかつい造形に真っ向から挑むか、人類への警鐘といった「ゴジラ的な観念」を抽出するか、方法論の選択肢はそれほど多くない。東京ビルドによるミニチュアのビル群には確かに特撮文化への敬意があるし、小谷元彦の木彫りの怪獣モニュメントは古代や中世への想像力もかき立てる。川田喜久治の加工された写真は、もはやゴジラを別にして、東京という都市空間の別の入口を見せてくれる。それでも、展覧会全体としてはやはりゴジラを「迂回」しているように見えるのは、少しもどかしい。その感覚もやはり、映画の技術集団が徹底的に練り上げ、いまや洗練にまで達したこのシンボルのあまりの強固さゆえだろうか。 そんな中で、56分という長さを気にせず見られたのが佐藤朋子の《オバケ東京のためのインデックス 序章》だった。かつて岡本太郎が発表した都市論を手がかりに「アンチ東京」の可能性を問いかけるレクチャー映像だが、ここには「映画」を回避することのない、ゴジラの存在基盤をめぐるストレートな探究が確かにあった。私たち人間は、これからもゴジラに踏みつけられない強靭なトリビュートを模索せざるを得ないのだろう。6月29日まで。

25/6/5(木)

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