評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
アジア、中東、欧州の話題作・問題作を
夏目 深雪
著述・編集業
おばあちゃんと僕の約束
25/6/13(金)
新宿ピカデリー
タイの製作会社GDHの作品は若者向きの恋愛ものやコメディなど、ヒットメーカーの宝庫なのだが、この作品は2024年4月にタイで公開されてから、年間最大のオープニング成績を記録したそう。 同じGDH製作でも、ベタなギャグが散りばめられているもの(同じく今月公開の『親友かよ』)や韓流ドラマ的なダークな急展開(『いばらの楽園』)など、作品の幅も広くなっているが、この作品は王道の一つとも言えるハートウォーミングな家族もの。家族といっても、大学を中退してゲーム実況者をめざす青年エムが、一人暮らしのおばあちゃん・メンジュの遺産を狙って彼女の家に住み込むようになる、という話。 パパ活ならぬ「ババ活」「ジジ活」で遺産をゲットする従妹が出てきたり、昨今の若者をシニカルに描いているのがいい。ミュージシャンのビルキンの自然体でいて闊達な演技のおかげで、徐々に祖母との絆や人生の意味に気付いていくエムの変化が観客のハートをガシッと掴み、王道のラストでも落涙せずにはいられない。 エムの住んでいる家や地域のバンコクらしい風情や、中国系タイ人である家族のリアリティなど、丁寧に作られた作品世界もずっと浸っていたくなる。
25/6/9(月)