評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
取材経験豊富な記者の目でセレクト
平辻 哲也
映画ジャーナリスト
フロントライン
25/6/13(金)
TOHOシネマズ日比谷
まるで豪華客船に乗り合わせたような没入感の高い映画だ。その成功の原因は、登場人物の過去やバックグラウンドを書かない脚本にある。まさに出来事の「最前線」(フロントライン)を追いかけているので、推進力が大きく、まるでリアルタイムドラマを観ているような緊迫感があるのだ。 脚本を務めたのは企画・プロデューサーの増本淳氏。フジテレビ在職時代は『コード・ブルー』シリーズ、退職後は福島第一原発事故を描いたNetflixドラマ『THE DAYS』を手掛けた。 昨今は“脚本を読めるプロデューサー”が減ったとも言われるが、増本氏は読めるどころか、一級の脚本を書ける人。『THE DAYS』同様に、緻密な取材に基づき、リアルさがひしひしと伝わってくる。 小栗旬を始めとした松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介ら実力派キャスト陣も、目の前で起こっている出来事だけで、その人の過去、人生観をにじませる。映像として、バックグラウンドが見えるのは、学校に通う息子を持つ岐阜所属のDMAT隊員役の池松だが、これは家族持ちの全ての人を代弁していて、効果的だ。ニュースでは知り得なかった事実がたくさん盛り込まれており、結末は知っているはずなのに、最後まで手に汗握った。
25/6/14(土)