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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『ザ・ヒューマンズ-人間たち』シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.2

これはどうやら手強い舞台のようだ。 レバノン系アメリカ人の劇作家スティーヴン・キャラムの秀作『ザ・ヒューマンズ─人間たち』は「人間たち」という副題にある通り、宗教をめぐる対立やら貧困、病気といった問題を鋭く提示している。さらに、それはある家族の会話によって浮かび上がる手法になっている。 作品にはまた、気味の悪さ、それは怪奇現象によって起きる。“恐怖劇”と言えるらしいのだ。 マンハッタンはチャイナタウンの老朽化したアパートで展開する。そこにはブレイク家の次女とボーイフレンドの住宅。家族は感謝祭を祝うために集まっていた。作曲家を目指している次女ブリジット(青山美郷)、長女エイミー(山崎静代)はガールフレンドと別れたばかりで体調を崩している。不眠症の父エリック(平田満)と母ディアドラ(増子倭文江)、祖母のモモ(稲川実代子)は認知症で車椅子生活だ。皆が問題を抱えているから、ディナーは対立的になる。 そして、ことの始まりは──。奇怪な物音、階下のランドリールームの轟音、やがて照明が消えてしまう。不気味な出来事の連続だ。 緊張感いっぱいの芝居、息を飲むことになる観客。労働者階級の悲哀、三世代のギャップ。ある一夜の物語には“不安”が詰まっている。

25/6/15(日)

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