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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
映画「F1(R)/エフワン」
25/6/27(金)
TOHOシネマズ日比谷
F1について何も知らなくても、楽しめる。ブラッド・ピットのファンだけど、カーレースには興味がないし知識がないという人こそ、楽しめる。 ヒーロー映画の典型であり、アメリカ映画らしいチームワークの物語でもある。 どん底状態のチームに、伝説の(悪い意味での)中年レーサーがやってくる。若いレーサーとの対立が生じ、不信があって、嫉妬があって、陰謀めいた事件も起きる。しかし、いつしかみなが彼を中心にまとまり、難関に立ち向かう。そして戦いが終わるとヒーローは去っていく。という、昔の西部劇みたいな古典的なストーリー。これを恥ずかしがらずに堂々と作れるのが、ハリウッドの強みだろう。ひねったり、裏をかくようなことはしない。 約2時間半の映画で、ちゃんと計ったわけではないけれど、7割くらいがカーレースのシーン。1秒も目を離せない。カメラワーク、編集、音楽も王道的で、奇をてらわない。見ていて疲れない。着替えてクルマに乗り込むだけのシーンですら、実にかっこいい。 F1レースは世界各地を転々として行なわれ、日本の鈴鹿も出てくるのだけど、そのシーンが短かったのが、ちょっと残念。 ストーリーを追うだけで面白い映画なら、スマホやタブレット、あるいは家のテレビで見ても楽しめるが、これは完全に体感型映画なので、大スクリーンと大音量で鑑賞するほうが絶対にいい。 その一方、練りに練られた、無駄のないセリフによるドラマ部分も、見事。これがあるから、レースシーンも手に汗を握ってみることになる。
25/6/21(土)