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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

この夏の星を見る

コロナ禍が始まって5年が過ぎ、あの時代を描く映画も登場し始めた。これもそのひとつ。ただし、『フロントライン』のように、コロナウイルスと正面で対峙する人びとを描くのではなく、コロナ禍のとき、中学生・高校生たちが「失われた夏」をどう過ごしたかという青春群像劇。 辻村深月が2021年6月から22年8月まで、東京新聞などに連載した小説が原作。コロナ禍の只中に書かれたものだ。 最近の青春ものは運動部ではなく、文系の部活動の話が多いが、この作品でも高校の天文部の生徒たちが主人公。メインとなるのは茨城県の高校だが、長崎・五島列島や、東京の学校も登場する。 コロナ禍で部活動も制限され、夏の合宿やイベントもなくなってしまう。しかし、星は全国どこからでも見ることができる。そこで、主人公たちはネットを通じて「スターキャッチコンテスト」をすることになる。それぞれの地の高校生たちは、オンライン上でミーティングを重ねるだけで、実際には一度も会わない。大会そのものが、オンライン上で共有されるのだ。実際の撮影でも、それぞれの学校ごとに撮られたので、俳優たちは会っていないそうだ。コロナ禍となって、初めてZOOMでミーティングをした人も多いだろうが、あの頃を思い出させてくれる。 両親の不仲に苦しむ子とか、三角関係(深刻ではない)など、いろいろなことも描きながら、「いま」という時代を切り取っている。高校生たちはコロナ禍になったことで不満は感じているが、だからといって何かに反抗するわけでもなく、仕方のないものとして受け入れているのが、「いまどき」のリアルだ。 星を捕まえる話なので、星空は重要だ。あまりに美しいので、どうせCGで作ったのだろうと思ったら、そうではなく、実景だという。もっとも、特殊な技術で加工しているらしいが。 高校生たちを演じる若手の俳優たちは、みな今後が楽しみだ。

25/6/29(日)

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