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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

キャンドルスティック

日本だけでなく、台湾、イラン、アメリカ(ハワイ)を舞台にした、国際的スケールのコンゲームもの。 FX市場でひと儲けしようとするグループの物語で、騙す相手は、市場システムを監視している「AI」というのが、新しい。 国際的スケールの物語だが、「007」や「ミッション:インポッシブル」のように、主人公が各国を駆け回るわけではない。詐欺グループのメンバーは各国にいて、ネット上で打ち合わせるのでリアルに会うことはない。阿部寛演じる天才ハッカーが主人公だが、彼も最後に台湾へ行くだけで、基本的には日本にいる。世界中を駆け回るのはネット上のデータだ。 まったく関係のなさそうな人物たちの動きが並行して描かれ、だんだんひとつに収斂していく。そのなかに、数字が色に見える人物が登場し、それを「共感覚」というが、これもラストに重要な意味を持つ。このように、本筋に関係のなさそうなエピソードも、すべてがつながっており、そのシナリオは実に緻密かつ無駄がない。人物たちにはそれぞれ過去があり、この犯罪に加わる事情もあるが、くどくどと描かず、テンポよく進む。映像も落ち着いたトーンで、派手なアクションシーンもほとんどなく、全体に静かな映画だが、それがタイムリミットへの緊張感を盛り上げている。 FXを知らなくても説明してくれるし、タイトルのキャンスティックの意味も、最初に教えてくれるので、ストレスはない。 詐欺決行の日時は、2019年5月7日。この日がどんな日だったか、すぐに分かった人は、相場師の才能があるかもしれない。

25/7/1(火)

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