PFF入選作『遠上恵未(24)』で異彩を放った遠上恵未監督の本格的長編第一作だが、ブレッソンのように抑制的だが選び抜かれたショットの反復のなかで、じわじわとこの時代にわれわれににじり寄る閉塞的な壁を炙り出す。そしてその空気のなかで、少年はとある性的なアクシデントに巻き込まれて、壊れ気味である。また、彼とつきあっているヒロインの少女も、格差社会の現実にぶつかる。このなんとも生きづらい世界で、彼女と彼はそれぞれのステージで悩み、不器用に彷徨っている。彼らがなんとかこの不条理を突破してほしいと思いながら、はらはらと最後まで観てしまう作品である。ウィリアム・ギブスンの詩の一節「平坦な戦場で」は岡崎京子経由で遠上監督のもとに届いたが、よもやこんな映画に転生しようとはまるで思いも寄らなかったであろう。

25/7/4(金)