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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『キャプテン・アメイジング』

男はスーパーヒーローに憧れ、女はスーパーヒーローに熱狂する、というのがありきたりの括りだが、英国出身の劇作家アリスター・マクドウォール・作『キャプテン・アメイジング』は、しかし冴えないヒーローを主人公にしているのだ。しかも3人の男優がトリプルキャストの一人芝居で演じるのだから見どころは絞られるだろう。 3人とは松尾諭(49)、近藤公園(46)、田代万里生(41)。父と娘の6年間の記憶の物語だとされている。 汚れたマントを着てガランとした部屋に一人立っている男の名はマーク。彼こそキャプテン・アメイジング。ホームセンターで働くこの男は宿敵と戦い、幼い娘を学校へ送迎し、一方で燃える炎に飛び込んで人命救助もする。酔っ払ってパブでバットマンとケンカも始めるのだ。 ファンタジーと現実が交差する冒険ストーリーというのも破天荒の物語らしい。 マークは次々と登場する人物と対話。また、娘も妻も演じるのである。 演出の田中麻衣子によれば松尾は「やんちゃ」、近藤は「実直さ」、田代は「純粋すぎる雰囲気」と見ているようだ。当然、個性がそれぞれ違うので、それが見どころ。 松尾はテレビ時代劇『螢草 菜々の剣』の“団子兵衛”が私は好きで、近藤は「大人計画」で鍛えた多彩な演技力が持ち味。テノールを生かしたミュージカル中心に活躍してきた田代にはストレートプレイの挑戦が試される。一人芝居をトリプルキャストという冒険の企画である。

25/7/19(土)

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