評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
架空書影。
25/7/26(土)
池袋シネマ・ロサ
「書影」とは出版用語で、本の写真のこと。この映画は、「本」を題材にした2編のエピソードからなる。2話の間には何の関連もなく、世界観もまったく異なる。ともに、峰平朔良が主人公を演じているが、まったく別のキャラクター。 最初の「書架の物語」は高校の図書室を舞台にした(つまり、高校生が主人公の)タイムトラベルSF。100年後の世界では、「本」が禁止され、一冊もない。その未来から来た少女がいる。村上春樹、サリンジャー、ブラッドベリと、「小説好き」の高校生の定番中の定番の作家の作品が言及される。そもそも「本」がなくなる世界というのは、ブラッドベリの『華氏451度』からの発想だ。 第2話「埋めてくる」はスティーヴン・キングの『ミザリー』をベースにして、それをひねったストーリー。有名作家が若い女性を監禁し、彼女にゴーストライターをさせていたらしいというところから始まる。『書架の物語』はSFとして整合性のある物語だが、こちらはホラー映画で、解決されない謎が残ったまま。 どちらも、脚本が練られていて、小説が好きな人なら楽しめる映画になっている。思わぬひろいものと言っては失礼だが、そんな感じの映画。まだそれほど有名ではないが、今後に期待できそうな若い俳優たちが出演している。
25/7/23(水)