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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

未来への警鐘 原発を問う

サブタイトルが「原発を問う」であり、監督が社会派映画の巨匠オリヴァー・ストーンなので、反原発の映画なのかと思ったら、まったく違った。原発推進派が大喜びする映画だ。しかし、反原発、脱原発のひとたちこそ見るべきだし、エネルギー問題や気候変動問題に関心のあるひとにとっても、非常に参考になる。 キュリー夫人に始まりアインシュタインを経て、オッペンハイマーのマンハッタン計画、ヒロシマ、ナガサキと、核エネルギーについての歴史から始まり、アイゼンハワー大統領の原子力の平和利用政策で原発が始まるまでの流れを確認できる。スリーマイルやチェルノブイリの事故によって、原発反対運動が激化し、多くの計画が中止になったことがわかる。福島の事故はサラッと触れるだけ。 後半、この映画のもうひとつのテーマである気候変動問題になり、脱炭素のためには何ができるのかという話になって、再生可能エネルギーがいろいろ紹介されるが、原発の代わりにはならないと説明される。 脱炭素は不可欠で、そのためには原子力しかない、というのが結論だ。 興味深かったのは、アメリカだけでなく、ロシア、中国、インド、フランスなどでの最先端の次世代原子炉の開発が、紹介されるところ。 2時間弱のなかに、原発の過去・現在・未来がぎっしりと詰まっている。その事実を知るだけでも価値がある映画だ。脱原発派は、この映画を否定、反対するのではなく、しっかり反論しなければならない。

25/7/25(金)

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