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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

雪風 YUKIKAZE

太平洋戦争を題材にした映画。戦後80年記念の大作で、史実をもとにしているという。主人公は山本五十六のような有名人ではなく、舞台となるのも大和のような有名な戦艦ではなく、駆逐艦。いわば、知られざる戦争秘話で、初めて知った。 半世紀以上前、東宝が毎年夏に作っていた戦争映画を思い出させる風格がある。VFXによる海戦シーンは、ハリウッドに負けていない。 ミッドウェイ海戦から始まるので、日本は敗退するばかり。最後には負けることも分かっているので、カタルシスのない戦争映画だ。かなりの予算をかけての海戦シーンは見応えがあるが、それはあくまで人間ドラマのための背景に過ぎない。 主要人物は、竹野内豊演じる艦長と、玉木宏演じる先任伍長、奥平大兼演じる若き水雷員。玉木は他の映画で艦長を演じているせいもあって、先任伍長に見えないのが問題だが、これは仕方ない。竹野内は朝ドラでも好演していたが、口数が少ない難役を見事に演じている。 軍人の描き方には美化している部分もあり、疑問がなくもないが、この夏は戦争を考えるべきなので、多くの人に見て欲しい。

25/7/27(日)

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