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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
スタントマン 武替道
25/7/25(金)
新宿ピカデリー
香港映画には思い入れがある。特に1980年代は、ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポーらが出演する作品の公開を心待ちにしていた。惹かれた理由は、想像を絶するアクションにある。CGではない、身体を張ったリアルなスタントシーンに圧倒された。 映画産業が隆盛を極め、“東洋のハリウッド”とも呼ばれた香港。その栄光の歴史をスターたちとともに築いたスタントマンに捧げられたのが、この『スタントマン 武替道』だ。 香港で整骨院を営むサムは、80年代に活躍したアクション監督。スタントマンに過激なアクションを求め、数々のヒット作品を送り出した伝説的な存在だ。今は業界と距離を置いていたが、盟友の監督が最後の新作を一緒に撮りたいという。ただ、安全面を重視する現代では、昔の無茶な手法や考え方が理解を得られず、若い世代の反発を招いてしまう。 アクションよりも登場人物の内面描写が本作の見所だ。好きなシーンがある。夜景をバックに観光名所のブルース・リー像の前で、サムと監督が若き日々を懐かしむ。過去の作品への敬意と、新作にかける情熱。その“映画愛”は、観客の胸にも届く。サムを演じたトン・ワイが見せる苦悩と穏やかな笑顔が何とも魅力的だ。
25/7/25(金)