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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
隣人のゆくえ-あの夏の歌声-
17/8/12(土)
K's cinema
本作と出会ったのは、遅まきながらリバイバル上映となった2022年だ。実は本作は2017年に公開された作品で、山口県下関市在中のサラリーマンだった柴口勲監督が、第二次世界大戦の空襲により焼け落ちて再築された梅光学院の生徒達40人と作ったミュージカル映画だった。 中高生の女学生たちとのひと夏の不思議な体験を描いた本作は、青春映画でありつつ、反戦映画でもあるのだが、目を覆うシーンは一切ない。それでもしっかりと戦争の恐ろしさを伝える語り継ぎたい作品になっている。こんなに胸が熱くなるメッセージ性が強いのに純度の高い日本映画があったとは。それが本作を観ての感想だ。 できることなら毎年、終戦記念日となる8月にリバイバル上映をして欲しい。その理由は、今後更に戦争を知らない世代が増えていくからだ。『隣人のゆくえ』の主人公たちは、まだ10代の“これから”人生を紡いでいく少女たち。だからこそ子供たちも自分ごととして映画を鑑賞できるはずだ。しかもこの映画は説教臭くないし、ミステリーとしても上質だ。心底、多くの人に観て欲しいと思った。核兵器を手にすることを簡単に口に出来てしまう政治家の言葉に乗らないためにも。 ※池袋シネマロサにて8/9(土)〜8/15(金)の1週間限定リバイバル上映。
25/8/8(金)