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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ
25/8/8(金)
TOHOシネマズ日比谷
幼稚園から小学校低学年の子には、いつものお約束のギャグの数々で楽しませ、高学年の子にも、思春期の悩みを描いて共感させ、一緒に見に行く大人(両親)にも退屈させないストーリー展開と映像的な仕掛けが次々とあり、今作もまた理想的なファミリー映画になっている。大人だけで見に行っても楽しめます。 今回は、カスカベ防衛隊の5人のなかで、いちばん目立たないというか、おとなしい、「ボーちゃん」が大活躍。制作過程は知らないが、多分、スタッフの誰かが思いついた、「ボーちゃんがボーくん(暴君)になる」というダジャレみたいなことから、長編映画になったのだろう。あるきっかけで、ボーちゃんがやたら強くなり、性格も変わって、暴君になってしまうのだ。 物語の舞台はインド。カスカベキッズエンタメフェステイバルで、しんちゃんたちカスカベ防衛隊の5人は優勝し、インドへ行くことになる。 随所に歌とダンスのシーンがあり、インド映画っぽい。日本でもヒットした『RRR』を見たとき、圧倒され、こんなスケールの映画は日本では作れないなと思ったが、実写では無理でも、アニメならば作れるのだ。 ゲストキャラクターとして、インドのアイドルの少女も登場。彼女は日本のアニメのファンなので日本語ができるという設定で、しんちゃんたちと日本語で話す。外国人が日本語で話せる理由と背景も、ちゃんと説明していて、子ども相手の映画だからと、いい加減なことはしていない。 アイドルの少女は、公の場では笑顔をふりまいて楽しそうにしているけど、それなりに悩みがある。ボーちゃんも、いつもおとなしいけど、それが本当のボーちゃんなのだろうか。「だれも、本当のぼくを知らない」というボーちゃんの問いかけが、刺さる。
25/8/7(木)