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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『アーモンド』

“演技派”と呼ばれたとはいえ、アイドル戸塚祥太(38)は何と難解な主人公を選んだものだ。 韓国の映画監督で小説家、シナリオ作家・ソン・ウォンピョンによる初の長編小説を舞台化したのが『アーモンド』だ。2022年の日本初演以来3年ぶりの再演である。 戸塚が演じる16歳の高校生ユンジェは、祖母までが「かわいい怪物」と呼んだ少年である。その彼の道程を見よう。 怒りや恐怖といった誰にでも備わっている感情を、彼はうまく感じ取れない。1年前の15歳の誕生日には目の前で母親と祖母が通り魔に襲われ死傷。その時、彼はただ黙って光景を見つめるだけだった。母さん(水夏希)は植物状態になっている。 そこへ、もう一人の怪物が現れる。ゴニ(崎山つばさ)。愛情も知らずに生きてきたこの男は激しい感情の持ち主。ユンジェとは真逆、正反対の少年だ。そんな2人が出会うとーー。 共演者は他に、ばあちゃんが久世星佳、シム博士が首藤康之、ユン教授が松村優、そしてドラの平川結月。喜怒哀楽、愛、悪、欲といった感情を習っていく少年。戸塚は、つかこうへい作品の舞台で経験を積み、新橋演舞場で観たA.B.C座『ジャニーズ伝説』ではシャイな芝居が印象に強く残っている。 母の愛情、他者を思う気持ち、さらに希望と勇気を。その感情を演じる戸塚に期待しよう。

25/8/16(土)

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