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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-

タイトルをよく見ると、「不思議の国のアリス」ではない。助詞が違っていて、「不思議の国でアリスと」なのだ。しかし、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のアニメ映画化だというので、パロディではなさそう。 まず、現代日本の就活中の女子大学生「りせ」が登場する。りせはなかなか就職先が決まらない。なんだ、アリスの話ではないのか。と思っていると、りせは、亡くなった富豪の祖母からの招待状が届いて、開業前のテーマパークのような所に招待される。祖母は『不思議の国のアリス』が好きで、その世界をテーマパークにしたのだ。りせがその、不思議の国へ入って行くと、アリスという少女と出会う。これでタイトルは回収。なるほど、そういう仕掛けか。 あとは、原作に出てくる、白ウサギや青虫、ハートの女王にトランプ兵、マッドハッターと三月ウサギ、ハンプティダンプティ、双子のトゥイードルダムとトゥイードルディーにチェシャ猫にといったキャラクターが総登場。しかし、あくまで主人公は、現代の悩める大学生のりせで、彼女の「自分探し」のストーリーだ。 現代日本のリアルを底に置きつつ、ルイス・キャロルの世界をダイレクトに大展開させることで、アニメならではの楽しさにあふれ、なおかつ、いまの若者の切実さも描く。けっこう、贅沢なアニメ映画。

25/8/17(日)

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