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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-
25/8/29(金)
丸の内ピカデリー
これは現在の自分探しの物語だ。『不思議の国のアリス』の世界にひとりの大学生りせが迷い込むという、ルイス・キャロルの名作から新たな物語を生み出したアニメーションは、アリスと一緒にどこにでも居そうな女の子がワンダーランドを冒険するお話。 もちろん、ウサギやハンプティ・ダンプティ、チェシャ猫も出てくるけれど、少し様子が違い、いろんな動物だったり、なんだか不思議な生き物が歩いていたり。その度に、りせが試されているような会話が展開されるのが興味深い。しかも突如、ラップシーンがあったりと奇想天外なのがまた面白い。やがて、そのすべてに意味があったと後半で理解するのだ。 心配性でとっても真面目、けれどアリスと一緒にいることで解放されていく主人公。海に飛び込むなどサバイバルなシーンもあったりと、まったく想像していなかった展開を迎える。細い線で描かれるアニメーションは、繊細なタッチがファンタジーの世界を見事に表現している。目立たないように生きてきた女の子が、目を背けていた感情に気付かされるお話は、後半の感情を吐露するシーンに多くの人が共感するだろう。そして観終えた後、優しい気持ちと達成感に包まれるだろう。
25/8/18(月)