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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
海辺へ行く道
25/8/29(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
一瞬で惹かれた。目の醒めるような海、心が晴れやかになるような空、いかにも着心地良さそうな服。とにかく美術が素晴らしい。しかも瀬戸内芸術祭の会場のひとつである小豆島を撮影地に選んだことで、実際にそこにある芸術を映画にも溶け込ませ、芸術という創造力を持つ少年の感性と、小豆島にやってきた本物と偽物の大人たちの姿にニヤけながら見入ってしまうのだ。 映画は才能あふれる未来の芸術家の子供たちに焦点を当てつつ、そんな彼らとは真逆でブレまくりの大人たちの決断も描いているので“人間の成長物語”こそ、実は大人の方が的を得ているのではと思ってしまう。いつまでもロマンチストで少年のままの男性と、恋に溺れ、ある時、現実に目覚める女性というコントラストも面白いし、年上の女性に憧れる少年の想いも初々しくて可愛い。そんな章立てのような構成になっているので全く時間の長さを感じない。 何より横浜聡子監督の演出が意表を突いていて面白い。それが現実離れしているのでファンタジー映画にも見えてくるのだ。更にキャスティングが素晴らしい。原田琥之佑はもちろん、他の子役勢も個性的な顔ぶれで、全員気になる配役なのが良い。大人勢も麻生久美子、唐田えりか、剛力彩芽、坂井真紀という女優陣が独特な雰囲気を醸し出していて気になる。そこに村上淳と宮藤官九郎というクセのある男優を組み合わせているのも最高だった。
25/8/16(土)