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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
アズワン/AS ONE
25/8/22(金)
新宿バルト9
ゲームに疎いのでよく知らないが、「星と翼のパラドクス」というアーケードゲームがあり、その設定と世界観をもとにした、完全オリジナルストーリーのアニメだという。物語はゲームの前日譚にあたるので、このゲームをしたことがなくても、新作アニメとして楽しめた。 主人公は、現代の地球でバンド活動をしている高校生の少年で、バンドの人間関係に悩み、親からもバンドを続けることに反対されている。もうひとりの主人公は、はるかな未来なのか別次元の世界かはよく分からないが、ある星で巨大ロボットの整備士をしている少女。彼女のいる世界は戦争状態にあり、その休戦の調停式から始まる。このふたりが、「意識の中」で出会う。少年がバンドをしていることもあって、音楽が重要な役割を果たす。 かくして、音楽青春ものとロボットSFとが融合。後者の方がスケールが大きいので、物語はそちらに引っ張られていくが、音楽青春もののパートも丁寧に描かれている。 キャラクターデザインが貞本義行で、壮大なスケールな架空の世界を背景にしているが、少年と少女の個人的な成長の物語である点で、『エヴァンゲリオン』を思い出してしまうが、まったく違う物語。 少女のいる世界は地球とまったく別で、巡星(メグリボシ)、軌道デブリ、星血(ホシノチ)といった、この世界ならではの概念があり、さらに耳慣れない国名・組織名も出てくるので、ゲーム「星と翼のパラドクス」を知らない人は、公式サイトの「KEYWORD」を見て、最低限の予習をしておくことを、お勧めする。
25/8/21(木)