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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
海辺へ行く道
25/8/29(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
香川・小豆島を舞台に、横浜聡子監督が子どもたちのひと夏を描く。美術部員の奏介を演じるのは、祖父は原田芳雄、父はギタリストで俳優としても活躍する原田喧太という血筋の原田琥之佑。15歳にして銀幕デビューを飾り、強い眼差しと初々しさを備えた姿に、早くも将来への期待がふくらむ。奏介と仲間たちが町の片隅で小さな冒険に出かけ、不思議な依頼や秘密を抱えた大人たちに出会う三章仕立ての物語。幻想と現実をまたぐ横浜作品らしい手触りが心地よい。麻生久美子、高良健吾らも脇を固め、海や路地の風景に柔らかな魔法を吹き込む。子どもたちが主人公だが、むしろ大人にこそ観てほしい。忘れていた夏の匂いと、日常の中の小さな奇跡を思い出させてくれるはずだ。
25/8/25(月)