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演劇鑑賞年300本の目利き
大島 幸久
演劇ジャーナリスト
パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
25/9/22(月)~25/11/16(日)
東京芸術劇場 プレイハウス、 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場、 広島JMSアステールプラザ 大ホール、 J:COM北九州芸術劇場 大ホール、 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール/アートスペース
タイトルロールの主人公ヴォイツェックに挑む森田剛(46)にとって一番の難役となる気配を感じる。19世紀の初頭に活躍したドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの戯曲は我が国では極めて上演が珍しいだろう。しかし、この作家は研究者のみならず文学師にとっても重要な人物なのだ。難解さ、手強さは並ではない。日本初演である。 主人公フランク・ヴォイツェックは、暗い過去に苦しみながらも愛を求めるイギリス人兵士である。幼少期のトラウマに悩み、薬物投与による幻覚、フラッシュバックによって現実と過去の境界が崩れてしまう。そんな人物を森田は演じるのだ。それでも「理解できる部分がたくさんある」。また「純粋な愛がテーマ」とも発言しているようだ。ヤル気満々だ。 舞台背景は冷戦下のベルリン、1981年。政治的な緊張と心理的葛藤が交差していた時代。ヴォイツェックは心の闇を抱えながらも愛する人への狂おしいほどの執着、嫉妬に揺れ動いていた。 上演台本と演出が小川絵梨子。出演者はこの人の演出に惹かれて集まったようである。 森田は初の出会いを楽しみにしているという。『金閣寺』で繊細な男を演じたが、新たな一面を引き出してくれるだろうか。共演者はヒロイン、マリーが伊原六花(26)。期待の新進女優だ。ヴォイツェックの母とマギーの2役が伊勢佳世(56)、ヴォイツェックの同僚アンドリュースは浜田信也。大尉トンプソンが冨家ノリマサ、医者マーティンが栗原英雄。面白い顔ぶれの演技合戦が楽しみになってきた。
25/9/6(土)