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夏目 深雪
著述・編集業
揺さぶられる正義
25/9/20(土)
ポレポレ東中野
配給の東風は『正義の行方』『マミー』『どうすればよかったか?』など、一筋縄ではいかない、ポレミークなドキュメンタリーの傑作を配給し続けている。この作品も、弁護士から報道記者に転身した関西テレビの上田大輔記者が、2010年代「揺さぶられっ子症候群」で虐待を疑われ親などの逮捕が続いていた頃から取材を進め、『ふたつの正義』『裁かれる正義』『引き裂かれる家族』などテレビ作品に纏めたところからスタートした。ちなみにいずれの作品もドキュメンタリーやジャーナリズムの賞を複数受賞している(3部作で国内外から受賞した賞はあわせて19)。映画化を模索し、東風に持ち込み、一本の映画として纏めるにあたっては東風や劇場のポレポレ東中野の厳しいアドバイスも生かされているという。 「揺さぶられっ子症候群」自体は知っていたが、それが複数の冤罪を生んだことはまったく知らなかった。また、まさかそんなことで逮捕されるなんて……と、経緯も非常に驚かされるものだ。専門家の正義感、メディアの報道の仕方、我々の認知バイアスが冤罪を生むメカニズムをこれだけ鮮やかに映像化した映画はないだろう。現代人必見。
25/9/10(水)