ウェス・アンダーソン監督の映画には外れがない。そして誰も彼のような映画は作れない。今年のカンヌ国際映画祭でのプレミア上映では7分半にわたるスタンディングオベーションを浴び、アメリカで公開されると、決してわかりやすい映画ではないのに大当たりした『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』もアンダーソンの世界全開の怪作にして快作だ。名優ベニチオ・デル・トロ演じる大富豪ザ・ザ・コルダを中心に展開する超奇想天外な物語を、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、マチュー・アマルリック…といった主役級のスターが癖のあるキャラクターを楽しんで演じ、美術も衣裳も本物にこだわり、撮影監督にティム・バートンやコーエン兄弟などの作品で知られる名手ブリュノ・デルボネルを迎えることで深化を遂げた映像美。『グランド・ブダペスト・ホテル』以来の大ホームランだと断言できる。

25/9/11(木)