評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
芸術・歴史的に必見の映画、映画展を紹介
岡田 秀則
国立映画アーカイブ主任研究員
見る場所を見る5──イラストで見る、鳥取の映画館&レンタルビデオショップ史
25/9/12(金)~25/9/24(水)
新宿眼科画廊
鳥取県の映画文化がこの9月、新宿歌舞伎町に着陸した。2021年以来、かつて県内にあった映画館やレンタルビデオ店を調査してきた鳥取大学佐々木友輔研究室のプロジェクトの成果が、画廊を広々と使って開陳されている。映画館の歴史を捉え直すことは、映画を見てきた私たち観客を見つめ直すことである。「見る場所を見る」というプロジェクト名の意味も自ずから明らかだろう。 この展示が面白いのは、単に映画館の写真や解説文を並べた資料館的な展示ではないことだ。地元のイラストレーターClara氏が写真から描き直した映画館や観客たちの絵で構成されており、読ませることを極力排して(厳密な調査結果は会場のあちこちに置かれた新刊書を参照)、どこもほんわかした空気に包まれている。つまり、研究でありながら表現も志向しており、またシネフィリーの香りがまったくしないのも爽快である。 このプロジェクト、展示活動の「3」までは地元の鳥取で開催されてきたが、「4」からは東京で行われている。なぜ東京なのか? 別に「地方の逆襲」でも「お国自慢」でもない。映画館やレンタルビデオとはどこにでも遍在していた日常の建物であり、東京だろうが地方だろうがすべての土地はかつての豊かな映画の痕跡を救い出すべきなのである。まして、知らない街の話こそ感興をそそるではないか。他の県もこれに続いてほしいと心から思った。 展示は24日まで。20日には研究から生まれたドキュメンタリー『ファントムライダーズ』2部作の上映も渋谷イメージフォーラムの上階で行われる。ご参集ありたし。
25/9/17(水)