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新たな気づきをくれるミュージアムを紹介
中山 ゆかり
ライター
HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展
25/9/13(土)~25/11/30(日)
CREATIVE MUSEUM TOKYO
東京・京橋の高層ビルの6階に、2024年秋に誕生したCREATIVE MUSEUM TOKYO。高い天井、広い空間、最先端のテクノロジーを駆使できる設備を擁するこのミュージアムは、これまで漫画やアニメ、絵本作家などの企画展を開催してきたが、今回焦点をあてるのは、江戸の浮世絵師・葛飾北斎だ。大学時代に収集を始め、約50年後の現在、所蔵する『北斎漫画』は1,700冊(!)にも及ぶという古美術商・浦上蒼穹堂(うらがみそうきゅうどう)の代表・浦上満氏の全面協力を得て、総数約450点もの作品が並ぶ大展覧会である。 『北斎漫画』をはじめ、北斎が挿絵でブレイクした娯楽小説の「読本(よみほん)」や、一時は200人にも及んだという全国の弟子たちの教本として描き始められた「絵手本(えでほん)」など、出品作は多くが小型の「本」だ。だが、大きく引き伸ばした画像で大空間の壁面を飾り、映像も多く取り入れた会場は、ダイナミックな熱気にあふれている。挿絵の小さな絵が100倍以上に拡大されても、画面が荒れることなく元の絵の迫力を伝えてくれるのは、北斎の緻密な表現力と大胆な構成力、そしてそれを版画にした彫り師の技量によるもの。拡大図を見て気づいた細やかな描写を、小さな挿絵で改めて見直す楽しみもある。 「ぜんぶ、北斎のしわざでした。」という印象的なタイトルは、常に新たな表現を追い求め、変化し続けた北斎の作品には、現代の漫画やアニメの原点となる様々な表現がつまっていることを示唆しているそうだ。光や勢いを表す効果線、シークエンスを語るコマ割り、思わず笑ってしまうギャグ描写、パラパラマンガやアニメになりそうな踊りの振付の指南書(実際、今回は4種の絵がアニメーション化されている)、あるいは「一筆描き」や文字から絵をおこす「絵描き歌」風の手法など、あれもこれもすべて、実は200年前の北斎がすでに生み出していたのですね——そんな実感とリスペクトが、タイトルからも感じられる。 最晩年の北斎は、魔除けのために毎日獅子の絵を描いていたといい、その新発見の肉筆画が初公開されるのも見どころのひとつ。だが何と言っても圧巻なのは、錦絵の連作「冨嶽三十六景」で46点の様々な富士を描いた後もまだ描き足りなかったらしい北斎が、モノクロの絵本『富嶽百景』で描いた102点の富士を一堂に並べた展示。多彩な構図を味わうのも楽しいが、なかには富士山が隠されている絵もあって、画面をじっくり見て探す歓びもある。錦絵とはまた違う作品群から、北斎の魅力をディープに体感できる展覧会となっている。
25/10/6(月)