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日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

てっぺんの向こうにあなたがいる

女性初のエベレスト登頂を成し遂げた登山家・田部井淳子の実話がベースの本作は、“人はなぜその道を選ぶのか?”という普遍的なテーマに田部井がモデルの主人公・純子と他者との関係性を通して挑んだヒューマン・ドラマだ。 登山クラブの仲間たちとの惜別や子供たちとのすれ違いがあっても、重い病にかかっても山に登り続けた純子。そこに、いまもなお映画作りに邁進する主演の吉永小百合の人生が重なる作劇が、観る者にも自分自身と向き合う貴重な時間をくれる。 印象的なのは、純子が鏡で自分の顔と対峙するシーンが、のんが彼女を演じた青年期のパートと現在のパートのどちらにも登場するところ。その両者の表情の変化は見逃せない。『北のカナリアたち』以来13年ぶりに吉永とタッグを組んだ阪本順治監督が、ダイナミックな大自然の映像と交錯させて描いた繊細な心模様に何を思うか? 観る人の立ち位置や視点によって、さまざまな感想が生まれるのも本作ならではの味わい。

25/11/6(木)

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