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植草 信和
フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
シャドウズ・エッジ
25/12/12(金)
新宿バルト9
ブルース・リー亡きあと、彗星のごとく現れ、停滞していた香港映画界を活性化させたジャッキー・チェン。『ドランク・モンキー/酔拳』『スネーキーモンキー 蛇拳』『クレイジー・モンキー 笑拳』のコミカルカンフー3作で、当時24歳だったジャッキーは人気スターに駆けのぼり、香港映画界は活気をとりもどした。さらにそれから4年後、彼は『プロジェクトA』という映画史に残る傑作で監督・主演をつとめ、“世界のジャッキー”へと羽ばたいた。 そのジャッキーも現在は71歳、『ベスト・キッド:レジェンズ』に続いて主演したのが、本作『シャドウズ・エッジ』だ。「中国で4週連続興行収入ランキング1位を記録し、公開から約1カ月で12億元(日本円で約250億円)を突破するなど、熱狂的な盛り上がりを見せた」、と媒体資料は伝えている。確かに、ジャッキーの年齢を感じさせないキレのあるアクション、迫真的な追跡劇は、観客を熱狂させただろうと得心できる。 舞台は、マカオ。華やかな街の裏側では、正体不明のサイバー犯罪集団が暗躍していた。警察の最後の切り札として呼び戻されたのは、追跡のエキスパート・黄徳忠(ジャッキー・チェン)。若き精鋭たちとチームを組み、最新テクノロジーと旧式の「捜査術」を駆使して、犯罪集団を追う、という物語。 現在、「監視社会」の恐怖を感じていない人はいないだろう。宇宙衛星の映像、街頭カメラ、果てはSNSまで、すべてのデジタル機器は“監視”を可能にしている。その“監視社会”の恐怖をテーマにした最初の映画は『トゥルーマン・ショー』(1998)だったと思うが、本作は、アジアでいち早く“監視”に注視したヤウ・ナイホイ監督の香港映画『天使の眼、野獣の街』のリメイク作品。監視システム、顔認識、ナンバープレート認識など、最先端テクノロジー機器の数々を盛り込んで、“監視社会の犯罪”と“その恐怖”を描いている。 ジャッキーの相手役をつとめたのは、彼より4歳若い67歳のレオン・カーフェイ。スクリーン・デビュー作『西太后』で香港電影金像奬最優秀男優賞を受賞。『愛人/ラマン』で知られる超ベテラン俳優だ。ジャッキーと渡り合うアクションも、年齢を感じさせない凄まじさ。高齢者(?)同士の“死闘”は、拍手喝采したくなる味わいがある。その他、K-POPグループ・SEVENTEENのジュン。『シスター 夏のわかれ道』のチャン・ツィフォンなど、若手スターも新鮮だ。 監督は、ジャッキーと『ライド・オン』に続きタッグを組んだラリー・ヤン。騒々しい政治問題など吹き飛ばしてしまう、“映画的快感”に充ちた痛快無比なアクション映画。しかも現代社会の恐怖を描いたジャッキーの新作の誕生を喜びたい。
25/12/15(月)