評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
文学、ジャズ…知的映画セレクション
高崎 俊夫
フリー編集者、映画評論家
cinema collage 映画プロデューサー 成田尚哉
25/11/30(日)~25/12/30(火)
ラピュタ阿佐ヶ谷
新旧の日本映画を意想外の視点で編み直し、その魅力を再発見する試みを行なっているラピュタ阿佐ヶ谷が、日活出身のプロデューサー、成田尚哉にスポットを当てるという画期的な特集を組んだ。 成田尚哉といえば、2012年、「生きつづけロマンポルノ」と銘打ち、蓮實重彦、山田宏一、山根貞男が選ぶ日活ロマンポルノ32本の特集上映が行われた際に、それに合わせて「キネマ旬報」でインタビューした時の彼の次のような発言が強く印象に残っている。 「⋯⋯ピックアップされた、社会的に評価された傑作、秀作といわれる作品だけが日活ロマンポルノではなくて、愚作、珍作、失敗作をぜんぶひっくるめたゴッタ煮のような膨大な作品そのものが僕にとってのロマンポルノなんです。ロマンポルノが撮影所を中心に、人々が映画作りをしたあるエロティックな運動体であったことは間違いないし、(⋯⋯)ですから、もうロマンポルノを神話化、神格化するのは勘弁してほしいと思っています」。 一部のシネフィルに特有な“作家主義”でロマンポルノを語ってしまう弊害を鋭く断罪した発言だった。 成田が撮影所出身の先輩プロデューサーたちと決定的に違っていたのは、漫画、劇画を日常的に読み耽り、その生き生きとした同時代的な感覚とエンタテインメント性を逸早く察知して、企画として実現してしまったことである。 どおくまんプロ原作の大ヒット作『嗚呼!!花の応援団』(76)も、佐藤まさあき原作の同名劇画を東映の鈴木則文監督に撮らせた『堕扉泥の星 美少女狩り』(79)のような異色作も成田ならではのユニークな発想から生まれた。 しかし、成田尚哉の日活時代の最大の功績は石井隆を脚本家として引き入れ、曽根中生の『天使のはらわた 赤い教室』(79・曽根中生監督)や池田敏春の『天使のはらわた 赤い淫画』(81)などの代表作を書かせたのみならず、上層部を説得し、最後のロマンポルノとして『天使のはらわた 赤い眩暈』(88)で監督デビューさせたことである。 この石井隆の過剰なまでの映画愛が炸裂した異形の傑作によって、不世出の映画作家、石井隆が誕生したことはいくら称賛してもしきれない。 今回の特集では、独立して以降の成田のプロデュース作品にも周到に目配りがなされている。中原俊監督の大ブレイク作『櫻の園』(90)、『12人の優しい日本人』(91)や、廣木隆一監督の出世作『800 TWО LAP RUNNERS』(94)、金子修介監督の『1999年の夏休み』(88)を含む25本のラインナップで、異彩を放ったプロデューサー成田尚哉の全貌に触れてほしい。
25/11/30(日)