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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
恋愛裁判
26/1/23(金)
TOHOシネマズ日比谷
「アイドルに恋愛は禁止」という理由はそもそもどうして出来たのか? それはファンの幻想を守る為に必要なことなのか? 過去には、あるアイドルは恋愛が発覚した際に髪を剃って謝っていた。本作はそんな行き過ぎの掟についてメスを入れる映画であり、アイドルとファンの危うい距離感を描きつつ、私生活を犠牲にしてまで夢を叶えようとすることは美徳なのかも綴っている。 しかし特に注目すべきは、前半が完全にアイドルの一日を追い、彼女たちの生活を覗き込むようなカメラワークなのに対して、中盤から裁判モノというまったく毛色の違う作風に変化する点だ。 齊藤京子演じる主人公は、何故、裁判をしようとしたのか? 彼女はなんの為にこの裁判を続けようとしたのか? ここから彼女と恋人の価値観の違いが見えてくるのも興味深い。ひとくくりには出来ないが、見方によっては男女の違いとも取れるエピソードも散りばめられており、恋愛における考え方の違いも、観客により両者どちらかに共感するかもしれない。 ここは深田晃司監督が、ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』を意識したと言っていたので、納得の心理ドラマとなっている。夢を叶えるには尊厳さえも手放さないといけないのか? 観客に問う構成が映画的で、しばらく頭から離れないのだ。
26/1/25(日)