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白坂 由里
アートライター
六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠
25/12/3(水)~26/3/29(日)
森美術館
日本の現代アートを俯瞰する目的で3年に一度開かれ、8回目となる「六本木クロッシング2025」。今回は「時間」をテーマに21組が参加している。 最もインパクトを残すのは、「コミュニティ・スペシフィック」と称して新しい共同体のあり方を追求する北澤潤が、インドネシア・ジョグジャカルタを拠点に2021年から継続してきたプロジェクト「フラジャイル・ギフト」だ。日本軍がジャワ侵攻に用い、さらにその後のインドネシア独立戦争でインドネシア軍に再利用されたという戦闘機「隼(中島キ43)」を実寸大で再現し、インスタレーションしている。機体は、現地職人との協働で、当時の記憶を描いた手染めの布と竹で、凧として作られた。2023年にテスト飛行を行い、最終目標は日本の空を飛ぶこと。植民地の歴史を省み、対話し、創造を通して新たな意味を作り出す。 手芸、コミュニティ、社会史が交差する領域を探究する宮田明日鹿は、名古屋市の「港まち手芸部」を皮切りに、60代〜90代の女性が手芸の技術を共有し、自分たちの作るものの背景を物語る活動空間を、金沢や珠洲などにも広げている。彼女たちの「声」に耳を傾けたインタビュー映像からは、生活の中で作品を生み出してきた女性史も見えてくる。 沖縄在住のひがれおは、戦後、米軍人向けの土産品として誕生し、70年代の観光ブームで人気となり、当時は沖縄女性の経済的自立を支える内職産業として発展した琉球人形を収集。展示を通して政治性あるいは多様性を浮き上がらせる。工芸としても魅力的な琉球人形を抱くひがのポートレイトがアイデンティティの複層性を示す。 荒木悠の映像作品に現れる巨大なオイスターによる「沈黙すべきか」「声を上げるべきか」などの問いは、展覧会全体にも響き渡るようだった。
26/2/1(日)