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監督、役者に着目して選んだこの映画

樋口 尚文

映画監督、映画評論家

原田眞人監督を偲んで Vol.1

このところ1970年代から80年代初めに監督デビューした名だたる映画作家が次々に鬼籍に入り残念でならないが、昨年も師走に入ってから原田眞人監督の逝去が伝えられた。このたび新文芸坐で組まれた原田監督追悼特集では、『バウンス ko GALS』を推したい。フィルモグラフィ後半の原田監督は『日本のいちばん長い日』『関ケ原』『燃えよ剣』などのメジャー大作の担い手として重用されていたが、映画評論家を経て1979年にホームの沼津で撮った初の監督作『さらば映画の友よ インディアンサマー』の初日に立ち合った自分としては、これはちょっと意外な展開だった。というのもこの愛すべき小品の第一作には、オタクの独り言のような不思議なパルスが流れていて、それが以後の初期作品でも反復されていた。そのパルスが行き過ぎて珍品じみた作品を生んで不安にさせることもあったが、ほどよく着地すると『KAMIKAZE TAXI』や『金融腐蝕列島・呪縛』のような特異な味わいの傑作に化けた。『バウンス ko GALS』は、コギャルや援交、ブルセラといった90年代後半の渋谷の風俗を扱った作品なのだが、ヤクザの役所広司とコギャルたちの独特な関係とあいかわらずのユニークなパルスによって、ただの青春風俗映画とは一線を画した実に独特な作品になっている。処女作『さらば映画の友よ インディアンサマー』やこの作品のような中小規模の作品にあってこそ、この不思議な原田節をいっそう堪能できるという気がする。

26/2/7(土)

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