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芸術・歴史的に必見の映画、映画展を紹介
岡田 秀則
国立映画アーカイブ主任研究員
[特別展] サスペンス・ミステリー映画の奇(あや)しい世界
25/11/30(日)~26/3/29(日)
鎌倉市川喜多映画記念館
開館から15年、時を重ねるにつれて、しばしば攻めたテーマの展覧会を繰り出すようになった鎌倉市川喜多映画記念館。2021年の「崩壊と覚醒の70sアメリカ映画」はいきなりアメリカン・ニューシネマから入る驚きがあったし、2022年「映画の分類学入門ージャンルで読み解くハリウッド」もタイトルだけで想像できると思うが相当な力業であった。そしていま開催中の「サスペンス・ミステリー映画の奇(あや)しい世界」で、ついにジャンル映画の真ん中を走り始めた。 渡米後のヒッチコックに源を発するサスペンス映画の流れと、謎解きという新たな魅力を映画に付け加えたミステリー映画との重なり合いに着目しながら、主に公開時のポスターを通じて現代までの系譜をたどっている。この種の映画ポスターはダークな色調や惹句も魅力だが、より注目したいのは滅多にお目にかかれないレアなポスターの登場で、同館や国立映画アーカイブだけでなく、当代随一の映画ポスター収集家井上由一氏の全面協力や(オーソン・ウェルズ『黒い罠』の日本初公開版なんて初めて見た)、ヒッチコック専門の名収集家加藤豪氏の所蔵ポスターの出品も受けており、やや通な見方かも知れないが、映画ポスター展としても見所は多い。 また、第二次大戦後のいわゆる「チャンバラ禁止令」の中で、アメリカのサスペンス映画の影響を受けて日本の大映がスリラー映画を量産していた史実にも目を配っているので、幅広く勉強になる。見終わったら、劇場でも配信でもいいので当の映画作品に触れてみたくなる展示だ。
26/2/19(木)