水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

プロジェクト・ヘイル・メアリー

「原作が面白い。傑作!」とは聞いていたけれど、読んでいなかったし、内容も知らなかったので、観る前は果たして2時間36分の長尺を飽きずに楽しめるのか? と思ったし、息が詰まるような展開だったらヘロヘロになるかもしれないと危惧していた。だが、そんな心配は観始めてすぐに吹っ飛んだ! 全人類80億人の命を救うために、しがない中学教師グレースが宇宙での壮大なミッションに片道切符で挑むことになる導入部はそれなりに重苦しい空気と緊張感に包まれる。だけど、それすらも、主人公に扮したライアン・ゴズリング(『ラ・ラ・ランド』)のチャーミングで親しみやすいキャラが払拭。 それこそ宇宙に飛び出してからは、地球の人たちの描写もあるものの、ほとんどグレースの独壇場だから、ゴズリングの細やかな芝居が紡ぎ出す彼の心象と目線に自らを重ね、宇宙規模の壮大な友情ドラマを思いっきり楽しんだ。 その味わいはシリアスなSF映画というより、懐かしさすら覚える王道のSFファンタジー。コミカルなシーンではほっこりさせられ、散りばめられた名作映画のオマージュには思わずニンマリ。グレースと一緒に宇宙での孤独な世界観に完全に没入していたから、彼が究極の選択を下すクライマックスでは“よし!”と心のなかで叫んだし、胸には込み上げてくるものも。都会で孤独な生活を強いられている人たちの心にも間違いなく温もりをもたらすに違いない。

26/3/25(水)

アプリで読む