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夏目 深雪

著述・編集業

創造的シネマ感性2018−2025 16の創造 16の感性

『見はらし世代』特集上映「創造的シネマ感性2018―2025 16の創造 16の感性」(4/3~23)にて上映 団塚唯我監督の初長編作品で、2025年のカンヌ映画祭の監督週間で日本人史上最年少選出として話題になった作品。10月に劇場公開しているが、『由宇子の天秤』の春本雄二郎監督や『逃げきれた夢』の二ノ宮隆太郎監督など、近年注目のインディペンデント系の邦画作品を集めたこの特集上映で、期間中、ほぼ連日上映される。 何度でも鑑賞に耐え得る、不思議な映画である。大きな特徴としては都市とある一つの家族を同時に描いているということであろう。映画はもちろん都市を描いてきた。ゴダールが『勝手にしやがれ』で街に出てパリを撮ったように、都市を撮るのは現代映画の一つの条件であったはずだ。だが邦画は意外と東京を真正面から描いてこなかった。小津の『東京物語』、黒沢清の『トウキョウソナタ』、いずれも親世代と子供世代の断絶、家庭の崩壊など家族をメインに描いてきたことが象徴的である。 特にこの映画の舞台である渋谷というと、スクランブル交差点といったランドマークや、若者の風俗が前面に出る形でしか描かれなかった。MIYASHITA PARKの設計に携わったランドスケープデザイナーの父と、専業主婦の母と、姉と弟の間には断絶があるのだが、それらは家族の離散や再生といった今までのような結末には行き着かない。村上春樹、岩井俊二、濱口竜介……都市の孤独や偶然の出逢い。まるで今まで文学や映画で表現してきた東京の記憶の集積、そしてそれらの進化系であるリアルな都市が感じられるはずだ。「見はらし世代」というタイトルが表すように、エモーショナルなことが起きているにもかかわらず、まるで都市の夜景を眺めるような俯瞰的な視点で、都市の再構成と一家族の再構成を二重写しにする類のない映画である。 特集上映では団塚監督の短編作品『遠くへいきたいわ』も上映される(こちらも素晴らしい)。上映される監督のロングインタビューが収録された同名の書籍も発売され、団塚監督は筆者が担当した。卒業制作である『愛をたむけるよ』から順に追って、いずれも噛み応えのある作品の解釈の参考になるであろう制作秘話を聞いているのでぜひご鑑賞のおともに。

26/4/1(水)

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