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映画は、演技で観る!

相田 冬二

Bleu et Rose/映画批評家

落下音

かんたんな映画ではない。 どちらかと言えばかなり手強い相手。 だけど怖いってなんだろうと じっくりじわじわ歩みを進めていけるような ゆとりを与えてくれる。 怖いというのは 積み重なった歴史の堆積みたいなものに ふれてしまうことなのではないか。 それにふれてしまうと じぶんをこれまでまもってくれていたものが たちまち壊れ砕け散って粉になって どこかに飛んでいってしまうかもしれないと 予感しているからなのではないか。 足を踏み入れる。 どんな映画でもそれはそうなのだけど これはとりわけ 足を踏み入れることの 愉悦と取り返しのつかなさと 不穏と不安とときめきと瞬きが ねるねるぐらぐらしていて あやうい眩暈に取り込まれそうな予感がある。 予感と予感の危険な遭遇は いったい何処に連れて行ってくれるのか。 びっくりするとか背筋が凍るとか そういうたぐいの恐怖ではない。 わたしたちの神経には 予感する回路が横たわっていて その回路が動きだすことを体感することこそ もっとも優雅な怖さなのだと 『落下音』はおしえてくれるのだ。

26/4/2(木)

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