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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

プロジェクト・ヘイル・メアリー

アンディ・ウィアーの原作を読むのが先か、それとも映画を観るのが先か。そんな論争まで起こっているのが本作であり、原作と共に話題となっているハリウッド作品だ。確かに映画を観ると原作が読みたくなるのだが、その理由は登場人物全員が非常にチャーミングだからであり、もっと彼らのバックボーンを知りたくなり、科学の話も出てくるのでより深められたらと原作に手を伸ばす。これぞ原作の映画化における最高の成功例ではないだろうか。 もちろんその功績には、原作に惚れ込んでプロデューサーとなり映画化を実現させ、主演を務めるライアン・ゴズリング自身の力と魅力にあるが、主人公となる科学教師グレースの人柄を理解しているからこその無邪気さや小心さを感じる演技が観客に親近感を与え、共に宇宙でミッションに挑んでいる気になっていくのだ。しかも相棒となる異星人ロッキーの造形が岩というシンプル過ぎる容姿なのに、登場してすぐに愛着が湧くのはその動きにある。日本の文楽人形からアイデアを貰ったという5人で動かす人形と、遠隔操作できるロボットでの撮影で、彼のせっかちで好奇心旺盛な性格が手に取るように分かり、ふたりのやりとりが可愛くて仕方がない。 地球滅亡の危機を救うミッションという映画は、近年では『アルマゲドン』などにもあったが、まったくそれとは違うふたりだけのあり得ない宇宙計画。合間合間に挿入される地球での生活は、グレースが長期の睡眠で忘れていた記憶の断片であり、このお陰で宇宙空間の画だけではない構成となって、映像的にも飽きることがないのだ。しかもクレバーだけれど、やや幼稚な性格ふたりのミッションなので、観客は応援せずにはいられない。一緒にハラハラし、驚いたり、笑ったりして、時には泣いて、手を取り合ってハグしたくなる映画だから、また映画館で彼らに会いたくなる友情物語なのだ。

26/4/3(金)

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