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スリル&サプライズ映画の専門家
高橋 諭治
映画ライター
落下音
26/4/3(金)
新宿ピカデリー
ドイツのマーシャ・シリンスキ監督が放ったこの長編第2作は、既存の映画文法を逸脱した驚くべき映画だ。舞台となるのは、北ドイツの農村地帯に立つ大きな家。1910年代、1940年代、1980年代、そして現代という4つの時代を生きた4つの家族の物語なのだが、時系列が解体され、4つのエピソードがめまぐるしく交錯していく。 加えて、観客の理解を混乱させるのは、4つの時代の主人公がすべて少女だということ。あらゆる物事を理屈ではなく、直感的に認知する子供の視点を採用したことで、少女の好奇心と欲望、不安と孤独が全編に横溢。「女性が被る心理的かつ身体的暴力」(監督談)という主題を、典型的なジェンダー映画とはまったく異なるアプローチで追求した作品となった。 さらに本作の凄いところは、正体不明の視線のショット、少女が死を疑似体験するタイムリープ的な描写など、スーパーナチュラルな要素が満載されていることだ。最後に飛び出す空中浮揚の超常現象に至っては、その鮮烈なイメージが脳裏にこびりついて離れない。もはや単なる歴史劇でも家族劇でもない。新種のホラー、もしくはSFとも解釈できる映像叙事詩である。
26/4/11(土)