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映画は、演技で観る!

相田 冬二

Bleu et Rose/映画批評家

POCA PON ポカポン

映画を選ぶということは、映画に選ばれることだ。 映画を観るということは、映画に見つめられるということだ。 映画の行方を追いかけるということは、あなたの思考の行方が追いかけられるということだ。 映画がどこに着地するかを見届けるということは、あなたの魂がどこに辿り着くか監視されるということだ。 わたしたちは、高見の見物をしているわけではない。 わたしたちは、安全地帯にいるわけではない。 もし、わたしたちが、映画を見極めるつもりなら、映画もまた観客を見極めている。 そのような緊張感を維持しながら対峙するべき映画が、この世には存在する。 奇妙な、実に奇妙なタイトルの本作はけれども、その奇妙さによってオリジナリティを保証されているわけではない。 むしろ、奇妙であるにもかかわらず、その奇妙さをいっさい誇示することはない、不可解な頑なさによって屹立している。 その自立性こそが、わたしたちのまなざしを本気にさせる。 静謐であると同時に多動的。 幻惑的であると同時に情緒的。 眩暈を生じさせるが揺るぎない覚醒がある。 人間の右脳と左脳、アナログな感性とデジタルな知性とが、競うこともなく、ヒエラルキーに甘んじることもなく、ただひたすらに交通している。 わたしたちは、いまだ交わることができるのだという真実に、やおら感動することになる。 答えの出ない現実に、丸腰で遭遇することの、たとえようもない安堵と解放に、ただただ驚いている。 わたしたちはいつからだって、先入観を棄て去ることができる。 わたしたちはいつだって、イチから、いや、ゼロから、誰かと、何かと出逢い直すことができる。 『POCA PON ポカポン』は、生まれたての可能性に不意打ちされる、最良の事故のような作品である。 この映画と、関係を結べ!

26/4/28(火)

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